Long may you run

- 末永く走り続けられますように -

トレイルランニング向けトレッキングポール比較表【2018年更新版】

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トレイルランニング向けトレッキングポールの比較表を作成・更新してます。下記からどうぞ。

docs.google.com

トレッキングポールの仕様表記は各メーカーごとにまちまちなのですが、こうして揃えると比較がしやすいかと思います。

是非、選定時にお役立てください。

以降は、このシートを作成しながら収集した情報からの知見です。

トレッキングポールの選択肢

トレイルランニングに適したハイエンド・トレッキングポールの選択肢は多くなく、事実上、次の3メーカー計6製品に絞られる。

  1. Black Diamond - Distance FLZ または Distance Z
  2. SINANO - トレランポールシリーズ 2種
  3. Mountain King - Trail Blaze シリーズ 2種

Amazon石井スポーツで、あんなに沢山ストック売ってるのに?と思われるかもしれないが、違いがある。

それは、軽量性を筆頭に、剛健性、レース中走行時の取り回しのよさ破損時のアフターサービスなどだ。そして...残念だがなかなか財布には優しくないお値段。ごく一般的な登山用ストックとは、似て非なるカテゴリーである。

特に重要な選定ポイントとなるのは素材軽さだろう。
素材については、カーボンを選ぶか・アルミを選ぶか。それが軽さともある程度関係する。以下が、素材別の一般的なメリット・デメリット。

素材 メリット デメリット
カーボン ・軽量 ・ポッキリ折れる/割れる
・お値段高め
アルミ ・折れにくい(曲がる程度)
・カーボン比で安価
・カーボン比で重い

しかし上記はあくまで一般論であり、Mountain King のアルミはBlack Diamondのカーボンより軽い というような一般論を覆す点も、選定時には加味したい。

各メーカーごとに、詳しくみてゆこう。

Black Diamond - Distance FLZ または Distance Z

ハイエンド・トレッキングポールの先駆け。 トレイルランナーだけではなく、熟練ハイカー使用者もよく見かける。

FLZ の特徴は、15cm-20cm幅のフレキシブルな長さ調整機能登り時と下り時で長さを変えながら使うといったことも可能にする。また、買ってみたがちょっと長さが身体に合わなかった...のような失敗がなくなる点も軽視できない。 ただしその機能によって、やや重量が増している点には留意。

Zはそのフレキシビリティを捨て、長さは固定だが軽量だ。

どちらも Black x Blue のカラーとルックスも格好いい。

実売価格は定価よりやや安め。
なぜかAmazonなどでは欠品・高騰気味だが、リアル店舗では入手しやすいので、是非手に取ってみてもらいたい。 東京のリアル店舗だと、石井スポーツや Run boys! Run girls! に置かれている。

アフターサポートの問題はあまり聞かない。友人はレース中に割ってしまったが、シャフトの交換は問題無くスピーディーだったとのこと。

SINANO - トレランポールシリーズ

スキー用ストック・登山用ストック・杖に秀でた、まもなく創業100年の国産老舗メーカー、シナノが送り込んできたトレイルランニング用トレッキングポール。

ショッキングピンク x グリーンの鮮やかな色使いが目を引くトレッキングポールだ。
プロトレイルランナーの支持者も多く、ビッグネームが名を連ねる。山本健一、望月将悟、小川壮太...彼らの意見も製品開発に反映されているという。

ラインナップは、上級者向けのトレランポール 13.6.proと、初・中級者向けのトレランポール 14.0の2ラインナップ。 この数値はシャフトの太さを表していて、剛健性と相関する。

トレランポールシリーズはアルミだ。トレイルランニングという競技性から、剛健性を重視し、一方で十分な軽さも確保している点で、アルミに自信があるのだろう。

実売価格は、リアル店舗でもオンラインでも、定価の場合がほとんどのようだ。Amazon でも購入可。
置いてる東京のリアル店舗は、Trippersなど。

アフターサポートは問題なく、破損時はシャフト交換可。

<参考>

Mountain King - Trail Blaze シリーズ

本当に必要な機能に絞った、フランス生まれの超軽量トレッキングポール。

Mountain Kingはポール専門メーカー。フランスのトレイルスター、セバスチャン・セニョーが開発に関わっている。

カーボンのTrail Blaze Skyrunnerは、最短の100cmならなんと2本で212gしかない。つまり片手にみかんを一つずつ持つ程度。
アルミのTrail Blazeでも250gと、カーボンを採用しているBlack Diamond Distanceよりも軽いのだ。

私はこのMountain King Trail Blaze の、アルミ110cmを愛用している(なお私の身長は175cm)。軽さと剛健性のバランスを取った。

実売価格は、リアル店舗でもオンラインでも、定価の場合がほとんど。Amazon でも購入可。
東京のリアル店舗では、三鷹のハイカーズデポ、Run boys! Run girls! 、Trippers、確か上野御徒町のアートスポーツ ODBOXにもあった気がする。

アフターサポートは問題無く、公式サイトによれば修理センターに到着後、1~2週間で修理とのこと。

<参考>

トレッキングポールを使うべきか

ミドルからロングのストック使用許可レースでは、使わない手はない。これについてはまた別の機会に、記事を書きたい。

以上、トレイルランニングにおけるトレッキングポール選択の一助になれば幸いです。

第三回 彩の国 100km 完走記(2/2)【southの闘い】

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前回からの続き。

⑥桂木観音58.0km

ニューサンピアを出て、走りながら Garmin と格闘。諦めて再度計測スタートはしたが、充電しているとまた落ちている。充電する→充電されてない?→落ちる、の繰り返し。
前半時点で充電残42%ということは、少なくとも70-80%には戻したいところ。もし充電が全く出来ないとなると、終盤でのペース確認・時刻確認が全然できないではないか…

あとから思えば時間はスマホで確認出来るのだが、焦ってしまって気が回っていない。

そうこうしている間に、山へ突入。暗さの中、足場を慎重に確認しながら登る、時計を確認するとまた落ちている、充電出来てない、レインウェア暑い、脱いでみたら寒い、焦る…

とまぁそんなことを、後から思えば未練がましく長々とやって無駄に心労を重ねてしまった。
桂木観音まではたった7kmだったのに、こんなことをして気が散っていたので、とても長く感じた。

4kmほど前進した辺りで、未練を断ち切った。

充電を諦め、延命を計る。
GPS1秒ごと計測+GLONASSモードを捨てて、UltraTrackモードに切り替える。思った以上にルートoffが頻発し、1分ごとのGPS捕捉がこんなにひどいとは、と凹む。
バッテリーの消費を睨みながら前進するが、思ったよりもまだ消費が早い。
説明書は隅々まで読んでいて、確かbluetoothが消費すると書かれていたなと思い当たり、スマホとの連携をoff(今更!これ次回からスタート時に必ず切る)、更にルートガイドも捨てる。

計測精度は落ちたものの、気が散る要素が減ったことで、晴れ晴れした気持ちに。レースへの集中力を取り戻す。

途中、大高取山へ向かう分岐があり、最後にここにまた差し掛かるのかなと横目に見ながら、ようやっと桂木観音エイドへたどり着いた。

稼いだ貯金がわずか5分に減っていてまた凹みつつも、楽しみにしていたシチューをパクパク食べる。夜のエイド開設・保守、本当にありがとうございますという気持ちで、必要なものを全て補充する。流石に夜は寒いので、ソフトフラスコを無理に満タンにする必要もなくなってくる。

この先は試走で知った道だと思うと、気持ちは戻ってきていた。

高山不動尊66.5km

桂木観音エイドを出てすぐのところで、二人組のランナーさんと会話。
二人とも試走しておらず、夜への不安に加えて、この後に関八州見晴台があるからここからずっと登りなんですかね、と怯えていた。
実際は桂木観音から出てすぐは走れる区間。むしろ走っておかないともったいないようないいトレイルなので、そう伝える。また、関八州見晴台も、想像しているほどきつくないですよと添えて、ではお先にと闇夜のトレイルへ。

疲労と暗さで、試走の時のように、風を切って駆け抜けるような走りは流石に出来ないが、それでも元気に走る。途中でコースが急に左側に上がるところでコースアウトしないようにせねば、とか考えていて、集中力も切れてない。

途中で里に降りた時に、思ったよりも疲労があるなと感じる。ここまでまだ60km超。疲労はあって当然だが、足の張りが抜けなくなってきていた。

それでも、試走で知っている道で良かった。関八州見晴台を力強く通過。

関八州見晴台からの息を呑む夜景

静寂の関八州見晴台。圧巻の夜景に息を呑んだ後、ここではあまり休まないと決めていたので、即座にツツジに囲まれた下りへ。下りも走れている。小さいステップで、ブレーキを掛けずに、水が流れるように—。そして高山不動尊エイドへ。予定時間より40分近く早い到着だった。

見渡せばかなりグロッキー気味の人もいるが、食べないことには走れない。
プリンがうまい!ペロリと二つ頂いた。丁寧に作られたサンドイッチも美味しい。パンは固いが問題ない。
カフェイン入りカプセルも、ものは試しで頂いて、水分もしっかり補充。

滞在10分ほどでスタート。西吾野(※にしあがの、と読む)駅までは知った道で走れる自信があったので、何人か抜き去りながら駆け下りてゆく。

⑧竹寺76.6km

自身最長走行距離を超えて、まだ脚は動くが、西吾野駅からの未試走コースに出た辺りから、急に歩みが遅くなる。知らない道というのが、これほど身構えさせるとは!そして睡魔が訪れる。

知らない道→ペース感分からないので落とす→ゆっくりペースで眠い…

再び山へ入る前に、とにかく食べておかねばと、子の権現までの区間用にバナナを一本。
バナナはいつでも食べられる。一房持って行きたいぐらいだ。

なぜか草が濡れている山へ。Trans Alps F.K.T II にはつま先部分に若干の防水コーティングがあって、濡れに強いのでガシガシ進む。
しかし眠い。すると、歩き・走りが雑になってくる。無駄に消費しているのだ。だが山に入った以上、眠りやすい場所もない。

虫がいなきゃ寝ちゃおうかなと思い、足下を見ると、小さな昆虫と目が合った。普段静寂の中に住む彼らからすると、さぞかし迷惑な客人達であろう。加えてさっきから茂みに何か鳥獣がいる気配もする。
ハセツネの時は全く眠くなかったから、眠くならないと思ってたんだけどな、何が違うんだろう、と訝しみながら進む。

遙か先にヘッドライト。遙か後方にもヘッドライト。一人、時々星空を仰ぎながら、登る。想像していたよりもタフな登りを前進しつづける。

子の権現の茶屋で休むかどうか決めていなかったのだが、到着してみたらあまりにも茶屋がゴージャスで、そして竹寺まで一気には行けなさそうな疲労状況だったこともあり、一旦腰を下ろす。
周囲のランナーはというと、うなだれて座っている人、一瞬チラ見して先を急ぐ人、食うべきか食わざるべきか悩み続けている人など千差万別。

自分は悩まず「肉うどん一杯!」とオーダー。

こんなに美味いうどん食べたことない

500円だったかな。いやもう、生涯食べたなかで一番うまいと思わせられる、染み入るうどんだった。豚肉も鶏肉も入っていて具沢山。
レーススタート以降、はじめてしっかり食べた。食べている様子につられてか、他の人もうどんを注文し始める。
身体もしっかりと温まって、さぁ竹寺エイドへ。

しかし、脚の疲労はかなりの状態。それ以上に、眠気との闘い。なんとか必死で竹寺エイドへ到着。貯金は13分ほどと大きく減っていた。先ほどうどんを食べたこともあって、竹寺の豚汁は食べず、少し補給して、あまり休まず前進することに。

⑨吾那神社87.3km

思い返せば、自分にとっての彩の国100kmは、この区間において極まった。

竹寺エイドを出た後は、疲労と眠気を引きずって朦朧としながら、とにかく意識が飛ばないように、飛んだら落ちて死ぬぞと自分を戒めながら前進する。

途中、少し里に下りて、あぁここが簡易郵便局か、確かに水道あるなぁと見掛けたそのすぐ後で、一旦睡魔を断ち切らないと、次の山は超えられないと決断。山中と違って里ならどこでも寝られそうだ、見る限り虫もあまりいない。仮眠を取ることにする。

道路で寝ていると車に轢かれる恐れがあるので、人の家の私道の入り口へよっこらせと腰を下ろさせて頂き、大の字になる。星空を見上げる。美しい星空。Atuさん、星見えましたね、と思った矢先に、一気に眠りに落ちた。
浅い眠りのため、ランナーが通る度に少し目が覚める。竹寺で抜かした女性ランナーが抜いていく。悔しくはなく、敬意を表すのみ。

15分後に完全に覚醒。よし。よし、行こう、行けると自分を取り戻して、再び走り出す。
眠ったことで脚の疲労がたまるかなと不安だったが、むしろ少し回復している。

次は大高山だ、そう遠く無いはず。そもそも東吾野まで11kmしかない、近いぞと考えて前進する。

しかしその後は、脚の疲労が容赦なく、山へ突入した辺りから牛歩の歩みとなってゆく。

80km、これが自分の脚の限界だった。脚が完全に終わってしまった。

脚が終わる状況はこれまで幾度となく経験しているので、特に焦りもない。いっそEVE A錠でも飲んだろか、でも飲んだら痛みのリミッターが効かずに、明日以降怪我してそうだからやっぱやだな、とか考えながら登ったり下ったり。果てしなく登ったり下ったり。

かなり壊れた脚を更に壊したうえで、山頂らしきところに着いたので、ここが大高山か、と安堵した。

ということは次が天覚山か、容赦ないアップダウンだなと思いつつ、
かなり壊れた脚を更に壊したうえに、トドメを刺すかのように破壊して、山頂らしきところへ。 もうかなりきつかった。後は東吾野へ下るはず、と思っている。

しかし、なぜか下りが始まらない。むしろ、登る。えげつなく登る。
もう脚には痛みしかないので、一歩進むにも激痛が走るが、痛みは重要ではないから頭の片隅にどけて、次には何時に補給をするぞ、まだジェルも残っているぞ、悪心が起きていないのは幸運だ、とポジティブに攻めの気持ちで進む。

登りが永遠とも思える。この登りはどこに向かっているのだ、いつ東吾野への下りが始まるのだ、と思いながら、小さな山頂へ。しかし前を見ると、これでもかというように、先にはまだ登りが続いている。

この山頂に刺された、小さな案内看板を見て唖然とする。
「→至 大高山」と書かれているではないか。

恐怖を感じた。全精力を投じて、這いつくばって登っていたのは、大高山でもその先の天覚山でもなく、名も無き前山だったのだ!

ここまで消耗しきっているのに、まだ竹寺エイド〜吾野エイド間の半分も来ていないという事実を理解出来ず、気が動転した。

ここまでと同じぐらいかそれ以上辛い感じで、大高山と天覚山へ?もう何も力、残ってないのに?
時間的にもかなり遅れている。そろそろ吾野神社が見えていたい時間帯なのだ。

進むしかない。まず大高山は、その後はそう遠くなかった。すでに遠くに日の出が見える時間。このペースだと24時間は難しいなと悔しい気持ちに。しかし切り替えて、27時間に目標を再設定して進む。

天覚山へはストレートなのかなと思ったら、全く容赦ないアップダウン。なんというコース!
ここ、悪名高き「飯能アルプス」を試走していなかったことを心から悔やんだ。知っていたら気の持ちようが違っただろう。

果てしないアップダウン。終わりが見えない。 かなり壊れた脚を更に壊したうえに、トドメを刺すかのように破壊して、メタメタにしたその上でたどり着いたのが、この光景。

そろそろモグさん、Atuさん、コーイチさんはゴールしてるかなと思い馳せながら、ようやく東吾野へ降りてゆく。

東吾野駅周辺では、ベンチで休んでいるランナーが数名。もうエイドが近いことは分かっているはずだが、動けないのだろう。

帰路に着いているランナーがいた。リタイアしたのだろう。
目を見て、お互い軽くうなずいて、言わなくても通じる言葉を交わしながら、彼は駅へ向かい、自分は先へ進む。

予定より1時間35分遅れと大きく崩しながら、吾野神社エイドへ到着。もうヘッドライトはいらない明るさ。
エイドのスタッフの皆さんも流石に疲れていて、あくびをして眠そう。ただただ、感謝しかない。
鳥うどんを一杯頂いて、もうあまり食欲ないな、こんなことではUTMFは走りきれんなぁ、と自分の弱さを嘆きつつ、新たな課題を認識する。
10分ほどで補給と休憩を済ませ、エイドを出る。

まだ87km。あと20km弱もある。脚には痛みしかないが、唯一の救いは、試走で知っているコースであること。
イメージすることが出来る — ユガテ、北向地蔵、一本杉、鼻曲がり、そして桂木観音へ戻る —。

北向地蔵までは距離感を感じずにすぐに辿り着けたが、ここからの体感は試走の時と随分違って、長く長く感じる。
一本杉へ向かう登りで、さっきのエイドで見かけたランナーが、下のロードをなぜか元気いっぱいで走っている。
これは盛大なロストなのか、それともショートカット確信犯なのかと悩ませられながら、もう声を掛けるにも遅いので、忘れることにして自分は登る。

語らぬ一本杉。この写真は試走の際に撮影した一枚

一本杉までは恐ろしく遠く感じた。ただ、気持ちのいい朝だった。精魂尽き果てているが、今日もいい天気、絶好のトレイル日よりだな。いいトレイルだな、いい木々だな、また元気な時に遊びに来たいな、と考えながら歩く。もう走ることはできない。気持ちは走っていて、早歩きはしているが、もう走った時の着地を支える力はない。

あと15km。ふいに100mileのランナーが現れて、元気におれを抜かしてゆく。圧倒的だ、すごい。尊敬と畏怖の念。south一週目なのか二週目なのかは分からないが、とにかく元気に駆け下りてゆく。その後ろ姿を無言で見送った。

⑩桂木観音97.8km

二度目の桂木観音エイドへの到着は当初24時間プランから2時間20分遅れているが、27時間はまだ諦めなくていい時間だ。
あと8kmほど。試走はしなかった、大高取山へ。でかいらしい。寄らずにもうゴールへ行かせて欲しいぜ、と恨めしく思いながらも、後半戦をスタートした時に通り過ぎた大高取山分岐を抜けて、大高取山へと挑む。

最後の登りと書かれているが、これがまた長いのだ

もう、誰とも競争していない。抜きたい人もいない。ずっと先にランナーの姿は見えるし、ずっと後方にも見える。各々が、自分だけと戦っている。

運営側がこの大会で、最後に味合わせてやろうとぶつけてきた、全く優しさのカケラもない登り。笑わずにはいられなかった。ここまで十二分に過酷だったのだが、最後にもタフな登り。
それをしっかりと受け止めて打破の後、大高取山の山頂を踏んだ。

山頂には応援の方が3人いてくれて、ランナーを一人ずつ迎え入れ、労っていた。
運営がこの大会の最後に見せたかった、絶景。好天もあって、十分に堪能出来た。
応援の方にのせられて、切り株の上に立ってパチリ。

viva, viva !

あとは下り。残す必要ももうないぜと思うと、意外と走れるもんだ。
痛みを受け入れながら駆け下り続け、すでに気温が上がり始めているロードも走り続けた。
途中、前の人に追いついてしまって、とはいえ抜かすのも忍びないので、その方達と喋りながら後方を陣取り、その順番でゴール。

26時間13分だった。また一つ自分の弱さを知り、少し強くなれたレースだった。

振り返ってみて

まず生きて帰ってこられたことに何よりも感謝したい。遭難や死は、レース運営側にも家族にも迷惑を掛けすぎて辛い。

100mileを思えば、50km, 70km, 100km どれも通過点に過ぎない。
今回は、100mileシミュレーションとしては甚だお粗末。
一年後には、100km走ってまだまだ余力があるレベルに達していなければならない。あらためて自身の身の程を知り、課題を認識できた。

今回最大の発見は、一度もリタイアしたいと思わなかった、その精神力。
これまでのトレイルレースでは、実は毎回思っていた笑。
昨年のハセツネでは第一エイドで。きつい上にやや水不足だったので、ここでやめようかなと弱気が頭をよぎった。
三河パワートレイルでも、どのエイドならリタイア可能か気に掛けていた。リタイアしたいからといって、どこででもレースを止められるものではないので。
ただ今回は、タフな局面が続きながらも、不思議とリタイアが頭をよぎらなかった。

そういう心理だった理由は自分でもいまいち分からないのだが、おそらく完走への執着心に他ならないと思う。
UTMFに出たい・完走したいという思いが、これまで以上に determinaton / 断固たる決意を引き出していた。
それさえあれば、そしてこの彩の国100kmをクリア出来たのであれば、また今後もタフなレースに、挑んで勝てるかもなと思う。

Garminトラブルに振り回されてレースに集中出来なかったのは、つくづく情けなかった。 文明の利器に頼りすぎて走っている。
そしてこういった事態の予測とリカバリープランが抜けていたし、クイックな見切り決断ができなかったのも未熟。

試走の有無は明暗を分けると改めて認識した。振り返れば後半、恐怖の飯能アルプスを一度でも走っていたら、気の持ちようは違っただろう。

最後に、本大会の運営、ボランティアの皆様、素晴らしい場を大会のためにお貸し頂いた、地元自治体や山林所有者の方々、
沢山の事前情報を与えてくれたブロガーの方々、
共にレースへ参加し、当日声を掛け合えたもぐさん、Atuさん、コーイチさん、
Twitterを介して、気に掛けたり、応援してくれた皆様、
そして何より、エスカレートしてゆく父のアドベンチャーを、いつも許しながら見守ってくれている家族に、心から感謝したい。

一人で走るシーンは多かったけど、ひとりぼっちでは、走っていませんでした。

第三回 彩の国 100km 完走記(1/2)【northの闘い】

2018年5月19日から20日に掛けて行われた、第三回トレニックワールド 100km & 100mile in 彩の国 100kmの部に出走し、完走してきました。

今回のレースについて、

  • 書き留めておかないと記憶が色あせてしまう
  • 沢山のブロガーさんの十分な事前情報があってこそ、今回完走にこぎ着けられた。自身の体験が、来年走る誰かのためになるならば
  • 共に走った方々のドラマをブログなどで知り、自分に起きていたことも共有してみたくなった

のような思いで、ここに手記を残します。

自身初の100km超レースチャレンジでもありました。

なぜ出場したのか

生き急いでいるわけではないのだが、レースでも練習でも、あまり遊ばず、寄り道せず、着実に次へと繋がることだけ無駄なくやろうしている。

それは、トレイルレースにおける自身の目標のひとつ、UTMF出場・完走を見据えた時に、あまり悠長ではいられないと考えているから。

まずUMTF出場を見据えた時、ポイント獲得は重要なテーマ。できれば早い段階できっちり積んでおいて、リスクを減らしたい。

2017年後半頃に、UTMF出場に向けて計画を立ててみたところ、“安寧にレースに出ていては、出場資格相当のポイントが貯まらない”と分かった。

ハセツネの4ptが有効なうちに、あと8pt得たい。

その一つ目を奥三河パワートレイル、そして彩の国100kmと、次期抽選時期に向けて余裕を持って確実に蓄積すると考えてのエントリーだった。ポイント狙いでトレイルレース走るのなんて格好悪いよね、と言われようがなんだろうがいい。

ただひとつ誤算があったのは、“奥三河パワートレイルから1ヶ月もあれば疲労が抜けるだろう”と考えていた点。そんなに話はうまくなく、

  • 三河パワートレイルはやわなレースじゃなく、まる二週間は脚が戻ってこなかった
  • 更に悪くしてしまった臀部・大転子部・足裏の踵の怪我

レースまであと一週間に迫ったときの回復のしてなさ具合には、やや血の気が引いてた。
けど、腐らずに一日一日を大切に、食事・ストレッチ・風呂・回復ラン・少しでもレースをまともに進められるような装備や食料の準備と、やれる限りのことをやって、彩の国当日にギリギリこぎ着けた感じ。

レースプランとしては、①完走、②27時間、③24時間という目標を掲げていた。

それ以前にもうひとつ。生きて帰る、が大前提となる。

スタート前

会場には車で。大きな渋滞もなかったのだが、会場付近で道に迷い、会場を3kmほど行き過ぎるなど、レース開始前からコースアウトする事案が発生。少し焦る。
そんなこともあって、会場着はスタート1.5h前の7:30頃と遅かった。体育館はすでに混雑していて、ギリギリ一畳ほどのスペースを見つけて敷物を敷く。

すぐ隣の畳は十分に空いているのだが、これだけ混雑しているなかで空いているということは、何か理由があるのだろうとそこは避けた。
よくよく見ると仮眠スペースという紙が貼ってある。知らずにそこへ陣取ってしまった女性が、スタッフに荷をどけるようにと言われて途方に暮れていた。自分や周囲の人達同士、工夫してスペースを作ってあげた。

朝食は起床直後に食べてきたのだが、脳に糖質が足りず偏頭痛が始まり気味だったので、急遽、持参した甘ったるい缶コーヒーとたまごサンドパンを投入。これで急回復した。臨機応変な判断が、レースでは問われる。

ほぼ準備を終えてひと段落。周囲を見渡し、速そうなベテランしかいない大会だな、一人だけ場違いじゃないかな、と感慨にふけっていたところ、Atuさんを発見。
ゼッケン番号とそれらしい風貌ですぐに分かり、駆け寄る。Atuさんに直接ご挨拶できた!この後Atuさんとは幸運にもスタート前にも会えて、短い時間の中で情報交換。

そうこうしているうちにスタート時間に。トレニックワールドらしい和やかな雰囲気の開会挨拶、そしてカウントダウンから、ジャスト9:00、スタートへ。レースが始まった。

レーススタート直後

雪崩を打って400人ほどのランナーが、これから100kmも山中を走るとは到底見えない元気さで駆け出してゆく。
一般の人が見たら、あら今日は10kmぐらいのレースだったかしら、と思っただろうか。

すぐにAtuさんがもぐさんを発見し、走りながらのご挨拶。直後にコーイチさんが自分を見つけてくれた。コーイチさんは仕事が立て込んで、ほとんど寝られずに今この時を迎えていることを知っていたので、ねぎらいの挨拶を交わす。

レースはランナー団子状態のまますぐにトレイルへ。もぐさんとAtuさんは積極的に前へ出て快調に走ってゆく。
自分は心拍とスピードを見ながら、自分のレースペースへすぐにアジャスト。
心拍は140前後、決して150を超えないこと。スピードは5'30/km前後かもうちょい遅いぐらい。

これから100km走ることを思えば、前半はとにかくマイペースで、疲労をためずに走り続けるだけだ。

①くぬぎむら体験交流館12.8km

第1エイド、12.8km先のくぬぎむら体験交流館エイドへ向けて、しばらくは集団で走る。とはいえ、他人のペースで走らされるような場面もない。

途中、楠の巨木が出現し、あまりの巨大さ・荘厳さに息を呑む。ただこの時はまだ気持ちに余裕もなく、写真を撮らなかった。いつかまた家族を連れて見に来たいなと思いながら通過する。

今回は1時間に200kcal-400kcal ずつ補給することで、疲労を最小化したい狙いがあった。
こういった頻度での補給が必要ということは、様々なトレイルランニングのガイドに書いてはあっても、なかなか実践出来ず、これまでもやれたためしがない。
前半25kmぐらいは積極的に補給しなくても走れてしまうのでついつい怠りがちだ。しかし今回は先が長いので、前半の補給が後半に生きそうだ。不要と感じても早めに食べ物を摂りながら走る。エイド間がおよそ2−3時間だとして、その間を持参の食料で補うイメージ。

くぬぎむら体験交流館に着く頃には、かなりばらけていた。そばのランナーさんに話し掛けながら走る。
ロードの練習やレースでは人に話しかけることまずないのだが、トレイルランでは不思議と、練習でもレース中でもどちらからともなく話が始まって、会話が弾むことが多い。

最初のエイドへ、24時間プランに対して15分貯金で到着し、速すぎず遅すぎないペースに安堵する。
脚は相応の疲労感という感じ。すでに日差しは高く上がっていて、暑さはなかなかのもの。遠慮なく被り水をもらい、エイドではパクパク食べる。200kcal-400kcal、次の1時間のためのエネルギーを摂り過ぎない程度に摂る。

ハセツネよろしく、水が切れる恐怖以上のものはないので、左右のフラスコにはもう一度maxまで水分を補充する。
自分の水分戦略は四種。真水、BCAAを含むスポドリ(水溶性の粉を持参)、100%フルーツ系ジュース、麦茶。これらをバランスよく、適材適所で摂取する。 計1Lは若干多めで重さは無駄なのだが、それよりも水分があることでの安心を優先する。

5分と滞在せず、先を急ぐ。

②慈光寺18.9km

越沢稲荷の立派すぎる大杉

トトロのバス停

くぬぎむら体験交流館を出てすぐに、越沢稲荷の大杉、そしてトトロのバス停こと前山行・稲荷前バス停が現れる。
大杉にはただ圧倒。手早く写真を撮り、朽ちた神社で、ここまで問題無く辿り着いたこと・この先の安全を祈願して、先へ。

その後、登りも下りもそれなりにありながらも、気持ちはこの後に控える笠山へ向いている。
northは笠山で負けなければ何とかなる、ぐらいで、あれこれ考えすぎるないようにしていた。 試走出来なかったから分からないし。

途中少しロードに出て(西平運動場)、下界は暑いなとややうんざりした後、再び山へ。
慈光寺エイドは近かった。貯金を20分と少し伸ばす。

エイドには、前日までに入手出来ずメゲていたピンクグレープフルーツジュースがあって、これはナイス!と嬉々となる。きっちり満タン補給させていただいた。これに限らずドリンクのバリエーション、本当に充実していて、すごい。
団子やらスイカやらをパクパク。次の1時間分を補給する。

エイドは人が多く混雑気味。一般のハイカー家族が、すわ何事と驚いていて、スタッフの方が、今日明日のレース中であること、ここまで20kmほど走ってきていること、皆100km以上走るのだということを説明したところ、ただただ絶句されていた。

しっかりストレッチして脚の張りを伸ばし、10分未満の滞在で再び山へ。

③堂平キャンプ場28.7km

優しくないアップダウンを繰り返しながら、笠山登山口へ。north 正念場の笠山へのアタックを開始。

しかし想像と違った。後で地図を振り返ると確かにそうなのだが、直登ではなくて、くねくねと曲がりながらの登り。厳しくはない。
走れてしまう場所なので、走って行く人もいるが、全く気に留めず、ただただ足を使わないように早歩き。

早歩きというのにも奥三河パワートレイルでつかんだコツがあって、“気持ち的には走っている”。大転子をしっかり前へと出して、一歩ごとの数センチを無駄にせずストライドを伸ばす。これで案外と、距離と時間を稼ぐことに繋がる。

最後の笠山への、笑ってしまうような急階段。こういう場で手摺りがあったら、迷わず腕に身体を押し上げてもらって、足を少しでも残す。トレッキングポールと同じ要領だ。足だけで登ると、思ったよりも持っていかれてしまう。

笠山の神社

笠山ニセピークからの光景。遠くまでよく見える。写真では分かりづらいが...

登った直後の景色は素晴らしい!そして小さな神社。ここでも手を合わせる。しかしこちらはニセピークで、少し先に頂上が。周囲のランナーと苦笑いしながら、下り、笠山峠からはまた登り、堂平キャンプ場エイドへ。

堂平キャンプ場はまた別の機会で来てみたいところ。天文台にキャンプ場、カイト(飛行機型ドローン?)を飛ばして遊ぶ大人達。
エイドで戦々恐々の補給をしている我々の横で、何の興味もなさそうにBBQとビールに興じるおじさん達とのコントラストが印象的だった。

美味しいスープをパクパク。ばっちり水分補給。

休んでいる人の中に、とにかくヤバい、もう今この状態だと〜 と、夢中で語り続けているランナーと、それをやや面倒そうに聞いている、おそらく友人であろうランナーが。聞かされる身もたまったもんじゃなさそうだなと思いながら、愚痴を垂れる彼から距離を置いた。

自分は素晴らしい快晴・好天に感謝しながら、5分超ぐらいでエイドを後にした。

④飯盛峠39.1km

突然、開けた絶景が眼前に

特に焦るでもなく、変わらず1時間ごとの補給を気にしながら飯盛峠へ向かう。カバ岳ってネーミングセンスすごいなとか、ツツジ山って予告してた割にどこだったんだ、とかひとりごちながら走る。
RUSH UTを担いでいる人に声を掛け、若干チグハグな会話をしつつ、変わらずマイペースで進む。

さほど腹も減っていないのだが、1時間ごとに補給せねばと考えて(実際にはタイミングもあって45分〜1時間15分インターバルの)補給食は続ける。次のエイドではサンドイッチが出るから、今はパン類は避けとこうとか、考えすぎなぐらい考えて食べる。

「食べながら走る」というのはスコット・ジュレクの自伝本EAT & RUNで知った技術で、到底難しいなと思っていたのだが、最近 Atu さんが紹介してくれた本で鼻呼吸を実践していることが幸いし、走りながら、鼻呼吸しつつ、食事を摂取できるようになっていて驚く。ホモ・サピエンスの能力すごいな。

もう一つ、常に気をつけていたのは、よく噛んで食べること。噛まないで胃に流し込んでは台無しだ。鼻でふがふがと粗く呼吸しながら、固形物はよく噛んでから胃へ送る。

飯盛峠エイドへ到着。ここのサンドイッチはパンが固いから食べたくないぜ、とか小さくない声で喋ってるランナーが。そこで頑張って大量のサンドイッチを作り続けてくれているボランティアスタッフの前で言うかな。

実際食べてみると、確かに下界のバターロールパンより固めなのは分かるけど、スープもあるし自分は食べられる。二つありがたく頂く。 ここではプチトマトがやたら美味かった。
パクパクとまた必要な分を補給して、手早く次へ。

さて後はニューサンピアへ戻るだけなイメージ。
実際足元は、トレイルレースのゴール数km手前によくありがちな砂利混じりの下り。足はばっちり残っている。更に貯金を増やせそうと考えて、速すぎないスピードで気持ち良く走る。

40km山の中を登って下って、この時点で8時間経過しているのに元気に走れている自分に自信を持ちながら、数人かわして行く。

静寂の森。目に見える範囲全てがこの木々

⑤ニューサンピア埼玉おごせ51.0km

予定より22分早く、ニューサンピアへ到着。日が落ちきらず、ヘッドライトも点灯不要な時間で戻れたことに手応えを感じる。
売り切れゴメンと聞いていたカレーがまだあって嬉しい。今回は沢山あるとのことで、二杯頂く(後で知ったが、無くなってしまって食べられなかった人がいたとのこと…本当にすみませんでした)。カフェインを摂りたく、午後の紅茶を一杯頂く。

手早くドロップバッグから、必要なものとの入れ替えを行ってゆく。
シューズは変えない、靴下もそのままでいい。前半の食料消化状況を踏まえて、必要なものと不要なものを選別。

そしてここが後半の出だしを狂わせることになるのだが…

Garmin の腕時計を充電する。残りは42%。今急速充電しておければ、後半は再充電不要かな、と考えながら。

防寒着を詰め込み、Tシャツを着替え、手や顔を一度洗って戻ってきたら、Garmin の計測が止まっていた。

正直焦る、ここまで刻んできた記録リセットかよ!と。

それだけでなく、どうもうまく充電できない。Garmin というより充電バッテリー起因?

このやり方でハセツネのときは問題なかったので、直前リハーサルはしていなかった。
時計の計測は一度ゼロに戻り、充電も不十分。焦りながらとにかくエイドを出る。

滞在時間は想定より少し長めで32分。
日は暮れていて、少し寒いのでレインウェアを羽織り、ヘッドライトを点灯。

兎にも角にも、後半のsouthへ出発だ。続く

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