Long may you run

- 末永く走り続けられますように -

ずっと心臓病だったと知って

2020年6月27日。走りはじめてしばらくすると心臓の下部から脇腹に嫌な感じの痛みが。それから二ヶ月近く経って、ついには歩くだけでも痛みが出るようになったのと、後述の"疑わしい所見"に気づいたので、8月下旬から専門医に掛かっていました。

そして今週実施した検査で判明したのですが、私には先天性の冠動脈形成異常、単冠動脈症という心疾患(心臓病)があると分かりました。

これは、比較的カジュアルな検査である胸部レントゲンや心電図検査では発見できない種類のものです。今回、先端的な医療設備のある専門クリニックで、心臓CTを撮ったことで発見に至りました。

医師曰く「稀ではあるが、たまにいる」そうです。うーん、吉祥寺に出るタヌキみたいな?

なお心臓周辺の痛みについては、単冠動脈症との因果はまだ分かっていません。

単冠動脈症とは/そして私の場合

以下、日本臨床(2007.09) 別冊 循環器症候群IIからの引用です。

単冠動脈症は先天性の冠動脈奇形の一種である。冠動脈の開口部が1つのみであり、その唯一の冠動脈によって、心筋全体が血液の供給を受けるものと定義される。

更に分かりやすく、心臓の画像を用いながらの解説を。これがご存じ、心臓ですね。

f:id:nuichi:20200829181158p:plain <通常の心臓。※画像転載

上の図のように、右冠動脈と左冠動脈があります。左冠動脈は更に、前に這う血管(左前下行枝)と後ろに這う血管(左回旋枝)に分岐します。

冠動脈は、心臓そのものに血液を送る役目を担う重要な血管です。更科功さんの著書「残酷な進化論」では、冠動脈について分かりやすく説明されていたので、こちらも引用しておきます。

 しかしここで疑問が沸いてくる。体中の細胞に酸素を届けるために、毎日24時間働いている心臓自身の細胞には、どうやって酸素を届けているのだろうか。(中略)心臓の外側から、心臓全体に酸素を届けなければならない。

 これを可能にしているのが、心臓から出た大動脈からすぐに枝分かれする冠状動脈という血管だ。冠状動脈は大動脈から分かれると、心臓の表面に伸びていって、月桂樹の冠のように心臓を取り囲む。

さて通常は大動脈から二本生えるはずの冠動脈。私の場合はというと、下記のように右冠動脈が、左冠動脈の根元から分岐していることが分かりました。

f:id:nuichi:20200829181319p:plain <私の場合。右冠動脈が大動脈から生えなかった>

単冠動脈症は、冠動脈の這い方によっていくつかのTypeに分けられます。現在活用されているのがLiptonによるType分類で、私はLipton II-Aに該当します。

治療と検査についての中間報告

ここでもう一度、「残酷な進化論」より。

このように心臓全体に酸素を運ぶという重要な役目を担っているにもかかわらず、冠状動脈は直径が2〜4ミリと細いため、詰まりやすい。冠状動脈を流れる血液が減ると狭心症になり、激痛が起きる。そして、心筋細胞に血液が十分に流れず酸素不足になると、心筋細胞が死に始める。これが心筋梗塞だ。

 (中略)ところが、私たちが激しく運動をしているときは、心臓の拡張期が短くなり、冠状動脈に十分な血液を入れることができなくなる。つまり、心臓がもっとも酸素を必要としているときに、十分な酸素を受け取ることができない構造になっているのだ。運動中に狭心症を起こしやすいのはそのためである。

 血管の内側にコレステロールなどが溜まって、血液が流れにくくなったり血管が硬くなったりすることを動脈硬化という。狭心症心筋梗塞は、冠状動脈の動脈硬化によって起きる。

実はこれを読むまでは「心臓の痛みはきっと鍛錬不足だ」と考えて、むしろ痛みを思考の外に追いやり、走り続けていました...。この一文を読んで「!そういえばこの10年、どう生活改善しても健康診断では悪玉コレステロール値が高く出る。そして今、走り出すだけで心臓に痛みが...。」

なので私は最初、狭心症を疑いました。肉体労働中や運動中に発現するものを「労作性狭心症」と呼ぶことを知り、これだろうと。駆け込んだ先のかかりつけ医の最初の見立ても「労作性狭心症の疑い」でした。

その検査過程で単冠動脈症を発見するに至ったわけですが、発現している痛みについては、今のところ因果関係が不明のままです。心臓CTでは、動脈硬化、狭窄といった所見はみられなかったのです。

ただし、私の場合は左右冠動脈が合流している左冠動脈本幹はどうしても負担が高く、ここには若干のコレステロールプラークも見て取れるとのこと。このことからまずは、

1.悪玉コレステロールを投薬治療で下げて、プラークの除去をはかる

という投薬治療を速やかにはじめつつ、

2.労作時の痛みが何に起因しているかを探るために、同等条件化での心電図を取得する

という調査・検査を今後行ってゆきます。

この形成異常が、子供達へ遺伝していないかがとても気になっています。子供達に心臓CTを受けさせれば判明するはずですが、造影剤を点滴投与しての検査、本人達も私も辛い。先天性の心疾患が子にも発現する確率はやや高い、というエビデンスはあるのですが、単冠動脈症もそれに該当するのかがまだ分かっておらず、かかりつけ医にお願いして文献を調べてもらっていますので、一旦はその結果を待ちます。

42年を振り返って

もしも冠動脈が生えている箇所が肺動脈からだったりすると、若くして心筋梗塞を発症して亡くなってしまう方もいるそうです。

その点では私は幸運にも、異常とはいえ生えている場所が致命的な場所ではなかった。また、おそらくランニングをはじめとしたスポーツを通じて、冠動脈が丈夫に鍛えられているのは間違いないですし、シリアスに取り組んできたからこそ食事や生活にも気を遣っていて、動脈硬化、狭窄はまだありません。

42年経った今日まで、痛みなどの違和感・異常も発現せず、こうして生きてこられたのは、ランニングや生活習慣への意識の賜物だったなぁと感じています。

元々私の死生観は「明日死んでもいいように、毎日を生きる」です。

今、これに拍車が掛かりました。これまで以上に、明日死んでも後悔がないように日々行動しなければ、と。

直近について

引き続きしばらく激しい運動は控えます。9月中旬頃には、大学病院でトレッドミルを走りながら心電図データを得ることになりそうですが、これにより今後の運動負荷レベルを決められるでしょう。

また、痛みが出た頃から山に入るのは避けていますが、これも継続します。過去に高尾山で、急逝したトレイルランナーを看取った経験から、山は電波も通らないですし、倒れた時に致命的です。

なぜかバイクは不思議と全く痛みがでない...ので、ライド頻度は増やすことになると思います。

そしてランニングについて。俺は果たして今後の人生で、中長距離、ハーフ/フルマラソンウルトラマラソントレイルランニングを、どこまでの強度でならまたできるのか・できないのか。

もっと記録を更新して高みに達したい、という望みが断たれるとしたら、これはなかなかショックです。

ただ、今日時点では考えても答えはでないため、ともかく今やれることをしっかりやりたいと思います。

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