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- 末永く走り続けられますように -

第三回 彩の国 100km 完走記(1/2)【northの闘い】

2018年5月19日から20日に掛けて行われた、第三回トレニックワールド 100km & 100mile in 彩の国 100kmの部に出走し、完走してきました。

今回のレースについて、

  • 書き留めておかないと記憶が色あせてしまう
  • 沢山のブロガーさんの十分な事前情報があってこそ、今回完走にこぎ着けられた。自身の体験が、来年走る誰かのためになるならば
  • 共に走った方々のドラマをブログなどで知り、自分に起きていたことも共有してみたくなった

のような思いで、ここに手記を残します。

自身初の100km超レースチャレンジでもありました。

なぜ出場したのか

生き急いでいるわけではないのだが、レースでも練習でも、あまり遊ばず、寄り道せず、着実に次へと繋がることだけ無駄なくやろうしている。

それは、トレイルレースにおける自身の目標のひとつ、UTMF出場・完走を見据えた時に、あまり悠長ではいられないと考えているから。

まずUMTF出場を見据えた時、ポイント獲得は重要なテーマ。できれば早い段階できっちり積んでおいて、リスクを減らしたい。

2017年後半頃に、UTMF出場に向けて計画を立ててみたところ、“安寧にレースに出ていては、出場資格相当のポイントが貯まらない”と分かった。

ハセツネの4ptが有効なうちに、あと8pt得たい。

その一つ目を奥三河パワートレイル、そして彩の国100kmと、次期抽選時期に向けて余裕を持って確実に蓄積すると考えてのエントリーだった。ポイント狙いでトレイルレース走るのなんて格好悪いよね、と言われようがなんだろうがいい。

ただひとつ誤算があったのは、“奥三河パワートレイルから1ヶ月もあれば疲労が抜けるだろう”と考えていた点。そんなに話はうまくなく、

  • 三河パワートレイルはやわなレースじゃなく、まる二週間は脚が戻ってこなかった
  • 更に悪くしてしまった臀部・大転子部・足裏の踵の怪我

レースまであと一週間に迫ったときの回復のしてなさ具合には、やや血の気が引いてた。
けど、腐らずに一日一日を大切に、食事・ストレッチ・風呂・回復ラン・少しでもレースをまともに進められるような装備や食料の準備と、やれる限りのことをやって、彩の国当日にギリギリこぎ着けた感じ。

レースプランとしては、①完走、②27時間、③24時間という目標を掲げていた。

それ以前にもうひとつ。生きて帰る、が大前提となる。

スタート前

会場には車で。大きな渋滞もなかったのだが、会場付近で道に迷い、会場を3kmほど行き過ぎるなど、レース開始前からコースアウトする事案が発生。少し焦る。
そんなこともあって、会場着はスタート1.5h前の7:30頃と遅かった。体育館はすでに混雑していて、ギリギリ一畳ほどのスペースを見つけて敷物を敷く。

すぐ隣の畳は十分に空いているのだが、これだけ混雑しているなかで空いているということは、何か理由があるのだろうとそこは避けた。
よくよく見ると仮眠スペースという紙が貼ってある。知らずにそこへ陣取ってしまった女性が、スタッフに荷をどけるようにと言われて途方に暮れていた。自分や周囲の人達同士、工夫してスペースを作ってあげた。

朝食は起床直後に食べてきたのだが、脳に糖質が足りず偏頭痛が始まり気味だったので、急遽、持参した甘ったるい缶コーヒーとたまごサンドパンを投入。これで急回復した。臨機応変な判断が、レースでは問われる。

ほぼ準備を終えてひと段落。周囲を見渡し、速そうなベテランしかいない大会だな、一人だけ場違いじゃないかな、と感慨にふけっていたところ、Atuさんを発見。
ゼッケン番号とそれらしい風貌ですぐに分かり、駆け寄る。Atuさんに直接ご挨拶できた!この後Atuさんとは幸運にもスタート前にも会えて、短い時間の中で情報交換。

そうこうしているうちにスタート時間に。トレニックワールドらしい和やかな雰囲気の開会挨拶、そしてカウントダウンから、ジャスト9:00、スタートへ。レースが始まった。

レーススタート直後

雪崩を打って400人ほどのランナーが、これから100kmも山中を走るとは到底見えない元気さで駆け出してゆく。
一般の人が見たら、あら今日は10kmぐらいのレースだったかしら、と思っただろうか。

すぐにAtuさんがもぐさんを発見し、走りながらのご挨拶。直後にコーイチさんが自分を見つけてくれた。コーイチさんは仕事が立て込んで、ほとんど寝られずに今この時を迎えていることを知っていたので、ねぎらいの挨拶を交わす。

レースはランナー団子状態のまますぐにトレイルへ。もぐさんとAtuさんは積極的に前へ出て快調に走ってゆく。
自分は心拍とスピードを見ながら、自分のレースペースへすぐにアジャスト。
心拍は140前後、決して150を超えないこと。スピードは5'30/km前後かもうちょい遅いぐらい。

これから100km走ることを思えば、前半はとにかくマイペースで、疲労をためずに走り続けるだけだ。

①くぬぎむら体験交流館12.8km

第1エイド、12.8km先のくぬぎむら体験交流館エイドへ向けて、しばらくは集団で走る。とはいえ、他人のペースで走らされるような場面もない。

途中、楠の巨木が出現し、あまりの巨大さ・荘厳さに息を呑む。ただこの時はまだ気持ちに余裕もなく、写真を撮らなかった。いつかまた家族を連れて見に来たいなと思いながら通過する。

今回は1時間に200kcal-400kcal ずつ補給することで、疲労を最小化したい狙いがあった。
こういった頻度での補給が必要ということは、様々なトレイルランニングのガイドに書いてはあっても、なかなか実践出来ず、これまでもやれたためしがない。
前半25kmぐらいは積極的に補給しなくても走れてしまうのでついつい怠りがちだ。しかし今回は先が長いので、前半の補給が後半に生きそうだ。不要と感じても早めに食べ物を摂りながら走る。エイド間がおよそ2−3時間だとして、その間を持参の食料で補うイメージ。

くぬぎむら体験交流館に着く頃には、かなりばらけていた。そばのランナーさんに話し掛けながら走る。
ロードの練習やレースでは人に話しかけることまずないのだが、トレイルランでは不思議と、練習でもレース中でもどちらからともなく話が始まって、会話が弾むことが多い。

最初のエイドへ、24時間プランに対して15分貯金で到着し、速すぎず遅すぎないペースに安堵する。
脚は相応の疲労感という感じ。すでに日差しは高く上がっていて、暑さはなかなかのもの。遠慮なく被り水をもらい、エイドではパクパク食べる。200kcal-400kcal、次の1時間のためのエネルギーを摂り過ぎない程度に摂る。

ハセツネよろしく、水が切れる恐怖以上のものはないので、左右のフラスコにはもう一度maxまで水分を補充する。
自分の水分戦略は四種。真水、BCAAを含むスポドリ(水溶性の粉を持参)、100%フルーツ系ジュース、麦茶。これらをバランスよく、適材適所で摂取する。 計1Lは若干多めで重さは無駄なのだが、それよりも水分があることでの安心を優先する。

5分と滞在せず、先を急ぐ。

②慈光寺18.9km

越沢稲荷の立派すぎる大杉

トトロのバス停

くぬぎむら体験交流館を出てすぐに、越沢稲荷の大杉、そしてトトロのバス停こと前山行・稲荷前バス停が現れる。
大杉にはただ圧倒。手早く写真を撮り、朽ちた神社で、ここまで問題無く辿り着いたこと・この先の安全を祈願して、先へ。

その後、登りも下りもそれなりにありながらも、気持ちはこの後に控える笠山へ向いている。
northは笠山で負けなければ何とかなる、ぐらいで、あれこれ考えすぎるないようにしていた。 試走出来なかったから分からないし。

途中少しロードに出て(西平運動場)、下界は暑いなとややうんざりした後、再び山へ。
慈光寺エイドは近かった。貯金を20分と少し伸ばす。

エイドには、前日までに入手出来ずメゲていたピンクグレープフルーツジュースがあって、これはナイス!と嬉々となる。きっちり満タン補給させていただいた。これに限らずドリンクのバリエーション、本当に充実していて、すごい。
団子やらスイカやらをパクパク。次の1時間分を補給する。

エイドは人が多く混雑気味。一般のハイカー家族が、すわ何事と驚いていて、スタッフの方が、今日明日のレース中であること、ここまで20kmほど走ってきていること、皆100km以上走るのだということを説明したところ、ただただ絶句されていた。

しっかりストレッチして脚の張りを伸ばし、10分未満の滞在で再び山へ。

③堂平キャンプ場28.7km

優しくないアップダウンを繰り返しながら、笠山登山口へ。north 正念場の笠山へのアタックを開始。

しかし想像と違った。後で地図を振り返ると確かにそうなのだが、直登ではなくて、くねくねと曲がりながらの登り。厳しくはない。
走れてしまう場所なので、走って行く人もいるが、全く気に留めず、ただただ足を使わないように早歩き。

早歩きというのにも奥三河パワートレイルでつかんだコツがあって、“気持ち的には走っている”。大転子をしっかり前へと出して、一歩ごとの数センチを無駄にせずストライドを伸ばす。これで案外と、距離と時間を稼ぐことに繋がる。

最後の笠山への、笑ってしまうような急階段。こういう場で手摺りがあったら、迷わず腕に身体を押し上げてもらって、足を少しでも残す。トレッキングポールと同じ要領だ。足だけで登ると、思ったよりも持っていかれてしまう。

笠山の神社

笠山ニセピークからの光景。遠くまでよく見える。写真では分かりづらいが...

登った直後の景色は素晴らしい!そして小さな神社。ここでも手を合わせる。しかしこちらはニセピークで、少し先に頂上が。周囲のランナーと苦笑いしながら、下り、笠山峠からはまた登り、堂平キャンプ場エイドへ。

堂平キャンプ場はまた別の機会で来てみたいところ。天文台にキャンプ場、カイト(飛行機型ドローン?)を飛ばして遊ぶ大人達。
エイドで戦々恐々の補給をしている我々の横で、何の興味もなさそうにBBQとビールに興じるおじさん達とのコントラストが印象的だった。

美味しいスープをパクパク。ばっちり水分補給。

休んでいる人の中に、とにかくヤバい、もう今この状態だと〜 と、夢中で語り続けているランナーと、それをやや面倒そうに聞いている、おそらく友人であろうランナーが。聞かされる身もたまったもんじゃなさそうだなと思いながら、愚痴を垂れる彼から距離を置いた。

自分は素晴らしい快晴・好天に感謝しながら、5分超ぐらいでエイドを後にした。

④飯盛峠39.1km

突然、開けた絶景が眼前に

特に焦るでもなく、変わらず1時間ごとの補給を気にしながら飯盛峠へ向かう。カバ岳ってネーミングセンスすごいなとか、ツツジ山って予告してた割にどこだったんだ、とかひとりごちながら走る。
RUSH UTを担いでいる人に声を掛け、若干チグハグな会話をしつつ、変わらずマイペースで進む。

さほど腹も減っていないのだが、1時間ごとに補給せねばと考えて(実際にはタイミングもあって45分〜1時間15分インターバルの)補給食は続ける。次のエイドではサンドイッチが出るから、今はパン類は避けとこうとか、考えすぎなぐらい考えて食べる。

「食べながら走る」というのはスコット・ジュレクの自伝本EAT & RUNで知った技術で、到底難しいなと思っていたのだが、最近 Atu さんが紹介してくれた本で鼻呼吸を実践していることが幸いし、走りながら、鼻呼吸しつつ、食事を摂取できるようになっていて驚く。ホモ・サピエンスの能力すごいな。

もう一つ、常に気をつけていたのは、よく噛んで食べること。噛まないで胃に流し込んでは台無しだ。鼻でふがふがと粗く呼吸しながら、固形物はよく噛んでから胃へ送る。

飯盛峠エイドへ到着。ここのサンドイッチはパンが固いから食べたくないぜ、とか小さくない声で喋ってるランナーが。そこで頑張って大量のサンドイッチを作り続けてくれているボランティアスタッフの前で言うかな。

実際食べてみると、確かに下界のバターロールパンより固めなのは分かるけど、スープもあるし自分は食べられる。二つありがたく頂く。 ここではプチトマトがやたら美味かった。
パクパクとまた必要な分を補給して、手早く次へ。

さて後はニューサンピアへ戻るだけなイメージ。
実際足元は、トレイルレースのゴール数km手前によくありがちな砂利混じりの下り。足はばっちり残っている。更に貯金を増やせそうと考えて、速すぎないスピードで気持ち良く走る。

40km山の中を登って下って、この時点で8時間経過しているのに元気に走れている自分に自信を持ちながら、数人かわして行く。

静寂の森。目に見える範囲全てがこの木々

⑤ニューサンピア埼玉おごせ51.0km

予定より22分早く、ニューサンピアへ到着。日が落ちきらず、ヘッドライトも点灯不要な時間で戻れたことに手応えを感じる。
売り切れゴメンと聞いていたカレーがまだあって嬉しい。今回は沢山あるとのことで、二杯頂く(後で知ったが、無くなってしまって食べられなかった人がいたとのこと…本当にすみませんでした)。カフェインを摂りたく、午後の紅茶を一杯頂く。

手早くドロップバッグから、必要なものとの入れ替えを行ってゆく。
シューズは変えない、靴下もそのままでいい。前半の食料消化状況を踏まえて、必要なものと不要なものを選別。

そしてここが後半の出だしを狂わせることになるのだが…

Garmin の腕時計を充電する。残りは42%。今急速充電しておければ、後半は再充電不要かな、と考えながら。

防寒着を詰め込み、Tシャツを着替え、手や顔を一度洗って戻ってきたら、Garmin の計測が止まっていた。

正直焦る、ここまで刻んできた記録リセットかよ!と。

それだけでなく、どうもうまく充電できない。Garmin というより充電バッテリー起因?

このやり方でハセツネのときは問題なかったので、直前リハーサルはしていなかった。
時計の計測は一度ゼロに戻り、充電も不十分。焦りながらとにかくエイドを出る。

滞在時間は想定より少し長めで32分。
日は暮れていて、少し寒いのでレインウェアを羽織り、ヘッドライトを点灯。

兎にも角にも、後半のsouthへ出発だ。続く

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