第六回スリーピークス八ヶ岳トレイル38k 完走記
2018年6月10日に開催された、第六回スリーピークス八ヶ岳トレイルレース One Pack Line 38k に参加してきました。
結果は6時間24分、男子総合70位(250人中)。
ここ一年、レースは出場数を重ねるごとに距離を伸ばし続けてきたので、自身久しぶりのショートレンジ。
来年エントリーを考えている人や、エントリー後の攻略を考えている人向けに完走記としてまとめています。
そのどちらにも該当しない方は、特に面白いブログ記事ではないかもなので悪しからず。
スリーピークス八ヶ岳とは
今年も One Pack Line 38k と Attack Line 24k、どちらも瞬く間にエントリーが埋まってしまったようだ。
人気の理由をあれこれと列挙することは出来るけど、つまるところこのレースの魅力は、
- 松井さん・小山田さんを中心とした、レース立ち上げのドラマ。その余韻がまだ続いている
これについては、今回参加するなかで見つけた下記の記事が詳しいので、是非お読み頂きたい。
そして、
- 類い希なる彼らのレースプロデュースセンス。HPから大会パンフ、参加賞、大会ブースのありとあらゆるところがいい感じ
この二つにあると思う。
レースを振り返ってみれば、優しいコースではなくどちらかといえばハード。完走率は高いけど、心折られそうな局面が何度か出てくる。
しかし、総48分岐箇所と3エイドでの運営スタッフによる絶え間ない応援が、自然と脚を、心を前へと進ませる。
レースが終わった後には、遅かろうが怪我をしようが、とにかくいい気持ちしか残っていないであろう至極のレース。
例年、完走率は約95%程度。と考えると、怪我でやむを得ずリタイアした人が少数いた以外は、キツい局面も乗り越えて、ほとんどのランナーが完走したということだろう。
是非一度、走ってみてもらいたい。東京からは中央線で行けるし交通の便も良すぎ!
ただし38kのエントリー基準には、50km以上のレース完走経験者(または標高2500m以上の山への登山経験者)と掲げられている。まずはその走力・脚力を身につけてから挑もう。
ボランティア優先エントリーについて
自分は昨年、この大会に魅力を感じていながらも、存在を知ったときにはすでにエントリー終了済み。
しかしレースを教えてくれた師匠が、
ボランティア参加すると次年度優先エントリー権利もらえるよ^^
あとこのレースはボランティアも楽しいよ^^
と教えてくれた。
以前からレースへのボラ参加はやってみたかったので丁度良かった。ということですぐにボラエントリー。大会前日はボラ受付、当日はC1分岐誘導を担当した。
前日に公民館で繰り広げられるディープなボラ飲み会も楽しくて。すっかり満足して帰ってきた。
それから9ヶ月後の2018年3月、レース優先エントリー連絡メールが届いた。タイミング的なものもあってちょっと悩んだけども、今年は選手として楽しんでみるか!と、出走を踏ん切った。
余談ながらこの、ボランティア参加者への優先エントリー権付与というのはなかなかうまいシステムだなと思う。
ほとんどの大会ではボラスタッフの確保に苦労し、足りないことが多い。
一方スリーピークス八ヶ岳は、むしろボラ枠も人気。
すると、十分なボランティアを集めて、手厚く選手をフォローしたり応援できて、それがまた選手の満足度につながり... という好循環を生んでいる。他のレースであまり見かけないのが不思議なぐらい。
作戦
さてレースに挑むにあたり、まずは目標ゴールタイム。
スリーピークス八ヶ岳では、入賞者以外はリザルトが公開されず、関門エイドごとのラップについては全く公開されていない。
このため、各関門エイドごとに何時を目指すべきか、ペース配分計画が立てられない。
関門時間を目安にしようかなと思ったが、どう見ても最初の関門が余裕がありすぎる。
事前に友人らからヒアリングしたところ、どうやら自分の場合は下記のようだ。
- 7時間は必達目標
- 6時間30分をクリア出来れば、結構いい感じ。友人らのレコードを超える
ペース配分はなんとも分からないが、平均走行ペースも見つつ、この時間を目標にゴールしたいな、ぐらいに緩めに設定。
次に、レース展開について。
先日柴又100kmを走ったたまちゃんに教えてもらったWebサイトの「トレイルであっても心拍はイーブンペース」というメソッドに、確かになと思うところが。
ウルトラの謀1
— たまちゃん@さーて、次はどこへ行こうかのう…? (@tama_chan_24) 2018年6月6日
今回柴又100Kに挑戦するにあたり、主に以下のサイトが参考になった。
鍋倉教授の楽しく走ってステップアップ講座https://t.co/bCXB5XVbDH
ただ、初心者ならともかく、そうでなければセオリーにただ従うだけでなく、頭で考えながらトライアル&エラーを繰り返すことが大切だと思う。
同じ意味合いのことを、雑誌TRAIL RUN 2017-18 AUTUM/WINTER 号「“走れる体”のつくり方」
において、宮﨑喜美乃さんも言っている。
気持ち良く走り続けるには心拍の変動を減らすことが大切です。
今までの自分はというと、
- 登る→心拍上がる→辛い!→ゆっくり歩く→ラクになってきたらペースアップ
こういうパターンだったのだが、雑だ笑 特に、『ラクになってきたらペースアップ』において、脚も心臓も休ませすぎていた感がある。
これらを踏まえて今回のレースで試してみるのは、
- 登る→心拍上がる→辛いがLTまでは我慢し、LTに達したらなるべく維持→LTを超えそうになったら速やかにペースダウン。下がりすぎたらペースアップ
こんな感じで、なるべく心拍の上下差を一定の幅に収めることにする。
...なんかトレイルランナーっぽくなってきた!笑
前日の様子と選手説明会
メイン会場の三分一湧水館前広場
前日入りし、受付と選手説明会へ参加。
選手受付後は参加賞をもらう。
まず嬉しいのが、Klean Kanteen のスチールカップ。これ渋谷ヒカリエで1,000円で売ってるやつや...。今年はスリーピークスロゴが緑色。昨年は黒色でした。
実用的すぎるスチールカップ。これは去年の黒バージョンの写真
そして定番のレースTシャツ。今年は、TNFのポリエステル速乾Tシャツ。こちらも実用的なだけでなく、なんたってカタチとデザインがいい。 レース後にFacebookで共有されたけど、今回のデザインは小山田さんの手書きだったらしい。デザインセンスもあるなんて。
レース翌日、嬉しくて着て出社した絵
選手説明会までの空き時間に、スリーピークス八ヶ岳名物、マルシェをブラブラ物色。
エッジの効いたトレイル系ブランドショップがずらり。好きな人からしたら垂涎モノでしょう。Answer4、Hungernock、Mountain Martial Arts, Run Boys! Run Girls!、道がまっすぐなど。
メジャーブランドもすごい。HOUDINI、Adidas, ALTRA, SUUNTO, The North Face, Salomon, PaaGoWorks など。
モノが買えるだけでも嬉しいのに、特価品があったり、スタッフの方と色々話せたり、シューズ試し履きが出来たりするのがまた嬉しい。
そうこうしているうちに、選手説明会が開始。
松井さん、小山田さんによるショートコント 懇切丁寧なコース説明がたっぷり1時間超。
名物コンビ
小山田さんの、
- 「C3ヘリポート以降は、まるでUTMB。...行ったことないけど」
- 「第二エイド過ぎてからハード。ここがスリーピークス」
この二つが印象に残った。
スタート〜第一エイド
明けて大会当日。38kの号砲はAM7:00。自分はかなり早く(一番?)会場入りしてしまった。AM6:00頃から徐々に選手が集まってくる。
AM6:30過ぎからは、ちゃんぷ練の並木さんと石井道場の石井基善さんのマッスルコンビによる準備運動。
内容は綺麗過ぎるラジオ体操第一。からの本気のYMCA。みんな苦笑しつつも楽しみながら、準備運動完了。
AM7:00の10秒前から全員でカウントダウン、そしてレーススタート!
配布されるパンフと公式マップには、この詳細地図が含まれていて便利
250人の38k出走者が一斉に飛び出す。スタート直後、三分一湧水館から公道に出るまでの間は沢山の方達が応援してくれていて、歓声に圧倒される。
中盤の集団には、よくあるレーススタート時のせめぎ合いや駆け引きはなく、みんな楽しそう。緩やかなロードの坂を登ってゆく。
ロード区間は最初の1kmあるかないかぐらい。すぐにオフロードへ。嬉しい!
とはいえシングルトラック。順序よく一列で。時々遅すぎる人がいたら、行儀良く一声掛けて右側から抜く。
最初の3kmは緩い登りとほぼ平坦。気持ちいいが、A12辺りから、編笠山へ向かうしっかりとした登りがはじまる。
自分はというとこの区間は、作戦通り LT心拍ちょい上を維持し続ける
ことに集中。
- 心拍155bpm前後をなるべく維持する
- 2017年10月に横浜スポーツ医科学センターで測った正確なLT(2mmol)は145bpm。OBLA(4mmol)は165bpm。
- 2018年3月の静岡マラソンでは平均心拍160bpmで走り続けて36kmぐらいまでは問題無く走れた。
- そこからの自分の成長...
とか諸々を鑑みると、今回の38km、6時間30分〜7時間動きづつけるなら、155bpmぐらいは妥当か、やや攻め気な設定に思える。
160bpmぐらいになったら、迷わずペースダウン。
150bpm下回りそうになったら、登りでもペースアップ。早歩きか、または走る。
粘り強く繰り返していると、徐々にGarminを見なくても、感覚的に分かるようになってきた。
身体の状態はというと、肌寒い気温にも関わらず、ほどよく温まっていて冷えすぎず。これもいい感じ。
そんな風に自分を制御しながら、編笠山までの開けた登りを、みんなで隊列を乱さずに一心不乱に登り続ける。
この写真はちょっと違う場所なのだが、こんな雰囲気の贅沢シングルトラックを一列で登る
10km先の第一エイドへ到着したのはスタートから1時間15分後。関門はスタートから4時間なので、かなり余裕のあるペースだ。
事前にチープと聞いていたエイドだが、そんなことはなく、必要十分な品揃え。
アミノバリューを一杯、バナナを1/4カット頂き、500mlまでソフトフラスコを補充して、1分と掛けずにすぐ出発。
エイドを出た直後はしばらく、気持ちのいい下りが続いた後、C区間に入る分岐へ。
熊が出た!ハイタッチした後、標高2500m、本レース最高峰の三ツ頭分岐への、長い登りが始まる。
くま! Photo by http://trail38.com/result2018/?id=gallery
三ツ頭分岐〜第二エイドへ
C区間のはじめは、昨年のボラで歩いた場所。懐かしくて、嬉しくて。あっという間に昨年分岐誘導を担当したC1分岐へ。今年の誘導スタッフと少し会話した後、どんどん先へ進む。
天候がよければ景色が最高なはずのC3ヘリポートは、今年は小雨でお預け。
その辺りから森林限界を超えてきて、岩肌の露出した登りへと変化する。斜度もきつくなってきて、手を使わなければ登れない場所もしばしば。
これがラストにあったらノックダウン!だが、幸いにもまだ14kmぐらいしか走っていないので、元気に前進できる。
とはいえ、極力脚を使わないこと。心拍は射程圏内を維持していること。この二点に集中していた。
C4からは特別環境保護地区エリア。一列走行遵守、無理な追い越しは禁止だ。見る限りみんなルールを守って前進していて、マナー違反者はいない。スリーピークス八ヶ岳を走るランナーは、皆紳士的。
C1からC2や、C4からC5三ツ頭分岐までは区間が距離が長くて辛さもあるが、分岐誘導スタッフが皆大声を張り上げて、ガラガラとカウベルを鳴らしてくれているので、それが聞こえてくると不思議と元気が湧いてくる。
ついに最高峰のC5三ツ頭分岐に辿り着くと、5人ぐらいのスタッフが応援してくれていた。標高2500mでこの天候、寒いのに!感謝しかない。
余韻に浸るのも束の間、切り返して、登ってきた以上に急な斜度での下りがはじまる。さすがにさほど走れないが、思いの他テンポよく下っていける。
途中で分岐に立っていた小山田さんに会った時には、マジでUTMBですねこれは、と伝えた。自分もUTMB、まだ知らないけども。
その後だんだんと走れる下りになってくるのだが、下りの苦手な人には辛い区間だろう。どうしてもスピードが出てしまう。しかし下手なブレーキを掛けると脚にくる。
自分はここ最近、下りの走り方が分かってきたところなので、積極的に走ってかなりの人を抜かせてもらった。
しかし、どうしてもこの長い下りでは心拍は上がらない...bpm140前後を推移してしまっていた。
第二エイド到着はスタートから3時間26分。500mlの水分がちょうど終わるところだったので危うかった。暑い天候だったら、水切れしていたと思う。
相変わらずエイドスタッフの方が親切で、自分の代わりにボトルに水を入れてくれたり。それに甘えつつ、その間自分はバナナやオレンジをパクつく。空腹はハンガーノックのサイン。そうならないよう、それなりに食べておく。
2分ほど滞在して、あまり休まずに出発。
心持ちとしては、大きな山場は超えたので、後は楽しいトレイルなのかな?と期待していたのだが、小山田さんが言っていた「第二エイド過ぎてからハード。ここがスリーピークス」これが待ち構えていた。
C10〜C19、鐘掛松の第三エイドへ
第二エイドを出てしばらくすると、しんどい登りが待っていた。第二エイドまで飛ばし気味且つ、登りも下りもしっかりあったので、なかなかにタフ。
周囲に目をやると、みなしんどそう。アップダウンが何度か(いや何度も)続き、脚を削ってゆく。時々、ここまでに脚の温存に成功しているランナーが元気に追い越してゆき、感心させられる。
しんどいが、この区間でも分岐が近づくごとにスタッフの声援やカウベルが聞こえてきて、それが小目標となって、持ちこたえさせる。
登りでは抜かされ、下りで抜きかえす、というパターンが多くなってきた。
C区間は、スタートから三ツ頭分岐以上に長く長く感じる...終わらないのだ。なので、Cってそもそもいくつまであったっけ、20ぐらいまであった気がするな、あまり焦らずひとつずつクリアしていこう、という気持ちで前進する。
進行スピードが遅くなってきたことで、水分の枯渇が恐ろしいのだが、C17かC18か(忘れた)では分岐スタッフの私設エイドが。飲み物を準備してくれていて、九死に一生を得た。
長く感じるC区間がようやく終わると、しばらくは安心して走れるトレイルに。
抜きつ抜かれつを幾度となく繰り返したタフなランナー
この写真のランナーは、何度抜いても抜き返してきたタフなランナー。「脚がつっちゃって」と言っていたのに。かなり長い間、お互い近い距離感でつかず離れず走っていたが、A18以降の南に降りる分岐以降、圧倒的に自分を突き放していった。すごい。
鐘掛松の第三エイドに到着できたのはスタートから5時間25分。かなり疲労していたので、しっかり水分も食料も補給する。
松井さんの予告通り、とても充実したエイド。ほぼ全部、少量ずつ頂いた。
鐘掛松の第三エイド。アルトラがスポンサー。本当はもっと長居したい笑
鐘掛松から出発すると、しばらくは長めの砂利道。その後も走りやすい下りがずっと続く。
周囲のランナーはというと、みな最後の元気を振り絞って、力強く走っている。
途中で24kの最後尾ランナー達との合流が始まる。24kのゴール関門は17時までだから、彼らもゴールできそうだ。
各ランナー間の距離も拡がり、抜いたり抜かれたりということもあまりなくなってきて、レースが終わってしまうことを惜しみながら、スタート/ゴール地点の三分一湧水館へと辿り着けた。
振り返り
あらためて、チェックポイントの到着時間を振り返ると、
- 第一エイド 1時間15分(エイド滞在1分)
- 第二エイド 3時間26分(エイド滞在2分)
- 第三エイド 5時間25分(エイド滞在4分)
- ゴール 6時間24分
であった。周囲のランナーのペースとの主観的な比較だが、第二〜第三が弱かった。無論もっと攻めたかったところだが、力及ばず。
優勝は4時間0x分台。2017年の上田瑠偉君の3時間53分は凄すぎて別世界。。
長丁場のC区間の進み方について。
C区間は19まである。完走後に思ったが、この数を覚えておくと、次の目標を求めて多少は気が楽になるはず。
さて、心拍を一定に維持する作戦はうまくいったのか?
これについては二重丸◎、大成功といったところだろう。
三ツ頭分岐以降の下りで心拍が落ちて以降、パフォーマンスを落としてしまったのが悔やまれる。とはいえどう抵抗していいのか今は解がないが...ともあれ、今後のトレーニングでも意識して、どんなトレイルでも今回のようなペースコントロールで走れるようになりたい。
最後に。
今年も公式サイトのフォトギャラリーがアップされた。これを見れば、小生の下手なブログ記事を読む必要もなく、スリーピークス八ヶ岳トレイルレースの魅力が分かってくるだろう。
選手、運営側、スポンサー、応援者。関わったみんなの笑顔から、このレースの類い希なる魅力を感じ取ってもらいたい。
http://trail38.com/result2018/?id=gallery
自分はというと...過去の完走記で見た絶景写真に憧れて、天気のいい日にまたひとっ走り行ってくるかな、と思っています。