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UTMF 2019 振り返りと UTMF 2020 に向けて

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UTMF 2019。挑んできましたが、A6忍野エイドで足踏みしていたところでレース中止に。中止後にアナウンスされた区間コース「MF_OSHINO114k」の短縮コース完走という結果となりました。

今回の UTMF がどんなレースだったかは、レース後10日間ほどのわずかな期間で、Blog, Facebook, Twitter, Instagram などで語り尽くされてしまっているので、今更自分が同じストーリーをなぞったところで何の面白みもなく。

手元には6,000文字ほどの文章が出来ていたものの、まだA2麓にすらたどり着いておらず(笑)、書き上がる頃には50,000文字ぐらいの大作、否、駄作が出来てそう。 今回その文章は破棄して、次の点についてブログに書き残したいと思います。

  1. UTMF 2019を自己中心的に振り返る
  2. UTMF 2020に向けて
  3. 最後に

1. UTMF2019を自己中心的に振り返る

f:id:nuichi:20190509144927p:plain 何時間向き合ったか分からない、走行計画シート

46時間制限のこのレースに対して、40時間以内必達、あわよくば38時間以内の完走を設定して入念な計画を立ていた。
この目標時間については、はじめての100マイル挑戦としては、攻めすぎず・守りすぎずといったところか。

しかし今回、レース中止のSMS報が放たれたのは、スタートから27時間18分後の、27日15時18分。
なお、アナウンスと同時に走行停止させられたわけではなく、次のエイドまで進むことができた。
例えばこの時間に終点・大池公園へ向かっていたランナーは、無事終点での完走という名誉を得ている。人数は100名に満たないようだ。

...28時間ぐらいでゴールする計画で走ってたら、大池公園で完走できてたんだな。

数日経ってから、そう思うようになっていた。

28時間00分でゴールするためのペースを、henry王子のUTMFペース計算機(傑作)で確認してみると、ざっくり次のようになる。

  • 昼12:00スタート
  • A2麓(51km)には6時間後の18時頃に到着
  • A3本栖湖には20:30過ぎに到着
  • A4精進湖、23時頃
  • A5勝山、AM2:00前
  • A6忍野、AM5:00前
  • A7山中湖きらら、AM7時頃
  • A8二十曲峠にAM11時前
  • A9富士吉田に午後2:00前
  • →大池公園にて午後4時頃ゴール

これを今回の経験に当てはめてイメージしてみると、

  • 今回自分がA4精進湖に到着した頃(AM4:27)には、二つ先のA6忍野へ向けて、その手前の忍草山を下っていなければならない
  • あの天子山地があるけど、A2麓51km地点に6時間で到達する必要がある
  • A7以降も良いペースで進むことも大事。進行スピードは、試走時のノンビリペースとほぼ同じ(無論、127km走った後ではあるが)

この目安時間は、2018年つまり晴天のUTMFが計算の元データなので、今年は霧・雨・泥によるペースダウンもあったわけだから、今回大池公園完走した人達は本当に強い。「勇者」という言葉が思い浮かんだ。

次の目標は、28時間以内の完走、これにしたい。次もなにも、まだ一度もUTMFも100マイルも完走していないけど。

天候やら、大本営英断と関係なく、ゴールできる力が欲しい。

UTMFを28時間以内で完走する強さ、速さ、計画性、戦略性、マネジメント力。
今回、何が原因かまだよく分からないが、右足の膝裏をしこたま痛めてしまった。これも論外で、怪我をしないこと。

相応の練習計画を立ててゆこうと思う。

来年も当たったとして、24時間ぐらいで中止になったら?いや、そういうのはきりがないので考えない。

今回、UTMF 2019に負けたと思っている。あんなに憧れていたフィニッシャーベストに、袖を通す気も起きない。

もう一度、UTMF 2019に勝ちたい。それを、28時間以内の完走という目標設定で置き換えたい。

今時点、相当な実力差があるのは重々承知なのだが、今回UTMFに負けて火が付いているので、この気持ちを燃やし続けたい。

2. UTMF2020に向けて

こちらは個人的な話ではなくて大会全体について、大きく二つ。

渋滞を考える

f:id:nuichi:20190509144059j:plain W粟倉からA1富士宮間の渋滞

f:id:nuichi:20190509144257j:plain 他人のペースで走る辛さが続く

まず今回、2300人程が出走したかと思うが、

  1. 特に前半、この人数では走れないパートが何ヶ所もあった
  2. 加えてコースの一部、熊森山や竜ヶ岳からの下りなどで、天候による影響があった

天候による影響とは、霧による視界不良と、雨による足下の泥濘である。これは多くの選手にとって精神的ダメージが大きかったので、意見や議論もつきないところだが、

  • 抜本的な解決が難しい地権者問題
  • 出来うる補助策としてのコース整備強化

に落ち着き、それ以上の解はないだろう。

ここでは「2300人が走ることによる渋滞」という問題を考察する。

トレイル渋滞は、高速道路における車の渋滞のメカニズムと似ている。

  • ひとりが下り坂でスピードを緩めれば、後続はブレーキを掛ける必要があり、その後ろは更に強くブレーキを...
  • ひとりが登りでスピードを落とせば、後続はそれに反応してブレーキを掛けて...

このメカニズムは中央道の小仏トンネル渋滞の解説が分かりやすい。

車の渋滞の解消は一筋縄ではいかいないが、我々に置き換えてみた時に思い浮かぶ解消策のひとつは、ウェーブスタートだと思う。

私が過去に走ったロードのフルマラソンで、ウェーブスタートが採用されていなかったレースはなかった。規模的には1.5万人や、レースによってはそれ以上のランナーが参加していながら、重篤な問題(=選手にとって、レース参加の意味やレースの意義すら考えたくなるようなレベルの問題)とならない。ウェーブ設計は、過去のベストタイムを申告して機械的に振り分けられるため、かなり公平だ。

ハセツネ本戦も、近いことを実現するためにウェーブスタートが取り入れられている(ただし、どのウェーブでスタートするかの意志決定は選手自身に委ねられるため、十分に機能はしているとは感じられないが)。

UTMFの場合は、LiveTrail の Goast 機能で予想ゴール時間が出せるわけなので、これがウェーブ作成時に使えるだろう。
最悪、ハセツネの手法でもある程度緩和されそうだ。シンプルに3つだけラインを引いて、28時間、34時間、42時間、それ以上とする。友人と走る場合は、速い人のエリアではなく、遅い人のエリアでスタートすること。

スタート時点のわちゃわちゃとしたお祭り感は少し減るが、全出走者がその後気持ちよく走れる時間が増すなら、トライする価値があるのではないだろうか。ただし話の最初に戻るが、天候系渋滞への好影響は軽微だろう。速いランナーならあの泥濘もスムーズ、とは限らない。

f:id:nuichi:20190509144457j:plain 天子山地の登り渋滞。霧で視界不良

しかし少なくともW粟倉からA1富士宮間のストレスは激減するだろう。私は計画から+1時間程度で抜けたが、これはまだいい方で、中にはもっと時間が掛かった人もいたようだ。

ウェーブスタート以外には、参加人数を大幅に減らすという案が思いつくが、これは発展的な案とは言えないだろう。

課題の再発防止と情報のオープン化について考える

次の問題は、「A2麓で富士宮やきそばが食べられなかった人がいた問題」...という個別の問題ではなく「昨年に引き続き、今年も同じ問題が起きてしまい、選手がもやもやしている点」だ。

UTMFほどのレースとなれば、様々な問題・課題が起きるのは当たり前。再発もあるだろう。

この点で、本部がどういった課題を把握していて、優先度付けしていて、どう解消しようとしているのかがブラックボックスなのが惜しいと思っており、これを解消したい。
焼きそば問題も当然手を打っていたと思うが(参加したとある事前イベントで、実行委員の方からその発言があった)、外からはどのような対策が取られていたのか見えないので、改善提案しようがない。

今時のスタートアップ企業を例に挙げると、企業経営における情報のオープン化を選択する企業が増えてきている。以前は従業員や利害関係者への開示など考えられなかったような機密性の高い情報も、積極的な状況共有や開示を行い、結果的にこういった企業は投資家や従業員からも熱烈に支持されている。
これは利害関係者を巻き込んで風通しを良くするばかりではなく、解決策の収集にも役に立つ。

UTMFほどの大会となれば、大会終了の一ヶ月後あたりで振り返りフォーラムを開催(ネット中継あり)、今大会で起きた課題の共有や、今決めている解決策、まだ解決策が見つかっていないものはどれか、再発リスクがあるものはどれかなどを情報開示するのは、やはり風通しの面でも、より良い具体的解決策を見つけて適用してゆく点でも、有効に思える。

この取り組みが本部主導で実現しづらい(コストやリソースの問題で)なら、ユーザーフォーラムというやり方があると思う。

ただし野良フォーラムではなくて、本部側がその存在意義を理解したうえで、支援していること。

10名程度の委員会を中心に、参加者との意見交換の場の準備・整備、意見の集約、本部への報告、本部の意志決定事項のフィードバックを行う。組織化されていて、きちんと運営されているのは当たり前、次年度・将来に向けた参加者の目線での意見を集約し、本部と課題共有、参加者への伝達ができる、本部からは切り離された関連組織だ。

このような例として身近なのものには、学園と父母の会などがある。父母の会は学園の運営を直接補助する役割を担いながらも、父母や子供達の目線での意見をまとめて、学園と対等に協議ができる立ち位置にある。

リアルなフォーラム開催も年1, 2回はやりつつ、オンライン上にもオープンなディスカッションの場を用意しておく。ZenDeskあたりのツールが妥当そうだ。

トレイルランニングには、関わっているみんなで、レース、そしてこのスポーツ自体を良くしていこうというオープンで協力的な文化があって欲しい。トレイルランニングの精神性としてそう宣言されても、違和感のない考え方ではないかと思う。

(余談) なおせっかくいい話でまとめたのに些末な愚痴だが、個人的には、メダリストがエイドでファストウォーターを提供しなかった点については引っかかっているので敢えて言いたい。提供する気がなかったなら、エイドでの供給予定資料への記載を申告しないでもらいたかった。アテにして計画を立てていたので。メダリスト関係者なら、供給できない(しない?)ことをレース前に分かっていたはず。しかし選手にはアナウンスされなかった。本部に通達していたかが知りたいところだ。

3. 最後に

選手やサポート、ボランティアなどで直接参加していない方には伝わりづらいところだが、UTMFはトレイルランナーであれば、参加してみる価値のある大会だとつくづく感じた。

参加する前は、100マイルという距離におびえていたのだが、振り返ると辛さなど記憶にない。ただただ、楽しかった。ずっと走っていたかった。ゴールしたかった。途中から膝裏が痛くなったのは、情けなくて悔しかった。

リアルやSNSでつながっている友人達、トレイルの意外な場所や農道・車道からの声援、ボランティアの皆さんによる、文字通り無償の支援や応援に、無限に力が沸いてきた。本当に嬉しかったです。ありがとうございました。来年こそは、28時間位内の完走で応えます。

いつまでもUTMFのような優れた体験を残したい。ひとりでも多くのトレイルランナーに、完走してもらいたいと思う(※含む自分w)。そして、リスペクトされるレースであり続けて欲しい。

鏑木さんからのメッセージは、走りながらハッと気づき、運良く拾えたので、共有しておきます。70km地点にありました。

そう、楽しくなければトレイルランニングじゃない!

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